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『カオス・ポイント』(3)
昨日紹介した「カオス」理論は、自然現象や生命系をはじめとした様々な分野に応用可能なものですが、ラズロは(彼自身のオリジナルがどれくらいあるのかは分かりませんが)本書ではそれを人間社会に適用したわけです。
「人間も、他の複雑な生命体と同じく、たえず『カオスの縁』[秩序とカオスの境界に位置する、きわめて柔軟な状態]に存在する、極度に敏感な系である。それは、生命系が集合して形成する生態系や社会の場合も同じである。これらの集合的な系は、その構成要素となっている個々の系よりもはるかに広大で、持続性も高いが、システム進化の力学は、これらの集合系にもあてはまる。
個々の、あるいは、集合的な生命系の進化は、系にかかっている主な制約に対して、その系がどのような振舞いをするかを表わす微分方程式によって記述されるのが普通である。だが、人間が形成する社会については、このような手法は使えない。精神や意識の存在が、進化の力学を複雑にするからである。社会に属する個々の人間の意識は、系である社会の動向に影響を及ぼし、人間が関与しない系よりも、はるかに複雑にしてしまうからだ。
比較的安定した時代には、個人の意識が社会の動向を左右する決定的役割を果たすことはない。これは、安定した社会システムは『ずれ』を弱め、孤立させてしまうからである。しかし社会が安定性の限界に達し、カオスに陥ると、きわめて敏感な状態になり、社会の成員の価値観、信念、世界観、願望に生じた変化などの、ごく小さな揺らぎにさえも反応するようになる。」(P31・32)
しばらく続いた安定期から転換点に入った社会は、恒常性(ホメオスタシス)が失われ、不安定な動きをし始めるようになります。
社会の動きは、数式による定量的表現で表されるのは計量経済学などごく僅かですが、それさえも転換点に入ると有効性が低下し、有効な経済政策が打ち出せなくなります。
私は54歳になりましたが、今から20年前、1990年くらいまではまだ社会はずっと安定していて、この先も毎年毎年同じように経過していくんじゃないか、という何とはなしのイメージをもっていました。
それが、この20年で本当に社会は激変し、安定性を失って、次に何が起きてくるのか読めない感じを強めています。
そんな時代でも、社会変動を的確に予測して名声を高めてきた専門家もいるのですから、そこには何からの法則性がないわけではありません。
ラズロはカオス理論を転換点に入った社会に適用した場合、次の4つの段階を経て展開していく、としています。それは、
1.起動(トリガー)段階、
2.蓄積段階、
3.決断期、
4.カオス・ポイント
と名づけられています。それぞれの段階の特徴は以下のとおりです(P34~40)。
1.起動段階:ハードテクノロジーの分野での革新が、人々の生活様式、労働形態に根本的な変化を引き起こし、各種資源の効率的な利用が進められる。
2.蓄積段階:ハードテクノロジーの革新が積み重ねられ、それに伴って人口増加に拍車がかかり、社会がいっそう複雑になって、社会や自然に対する人間の影響力が高まり、もはや元に戻すことのできない不可逆な変化を遂げる。
3.決断期:様々な行き詰まりにより、従来の価値観、世界観、倫理、願望が疑問視されるようになったことで、主流の社会秩序はストレスを受けて、社会は動揺期に入る。
4.カオス・ポイント:もはや後戻りのできなくなる重大な岐路。「崩壊(ブレイクダウン)への道」か「前進(ブレイクスルー)への道」のどちらかに進まざるを得なくなる。
現在がこの転換点に入っていることは疑いありませんが、人類は過去何回か同様の転換点を経験し、(神智学的にいえばアトランティス人種の次のアーリア人種に入って以降は)それを見事にブレイクスルーの方に乗り越えてきた、と考えられます。
各転換点の都度、同様の4段階のプロセスがあったのだと思いますが、現在の転換点は具体的にはどのようなものだったのかというと、
1.起動段階=1800~1960年:新石器時代以降、工業化時代の到来までの8000年間には、それほど目立った技術革新はなかったが、1800年頃から繊維産業で木綿の紡績で技術革新がもらたされたのを皮切りにイギリスで産業革命が起こり、様々な分野に波及した。19世紀末にはエジソンによる電気をはじめとする一連の発明により、この動きはさらに加速する。
2.蓄積段階=1960年~現代:1960年代に入ると、今日のIT産業につながる情報分野での技術革新が一気に進み、「第2の産業革命」ともいえる状況を呈した。それにより、生産と消費は合理化されコストも激減して、開発・生産・使用・廃棄が激増した。経済のグローバル化が進むとともに、地域の伝統が破壊され、貧困・格差問題が拡大し、生活環境は著しく悪化した。
3.決断期=2005~2012年:2.の状況が加速し、テロや戦争、政治的対立、経済・金融の不安定化、気象・環境の悪化によって、世界システムの持続不可能性が明らかになってきた。
4.カオス・ポイント=2012年:この年に特定されているのは、様々なデータに基づく計算と、マヤ文明の予言などからの推論による。このカオス・ポイントに向かって、今の時点では私たちの前には2つの道
(a)崩壊(ブレイクダウン)への道:最悪の状態へと向かう退化
(b)前進(ブレイクスルー)への道:新しい文明へと向かう進化
に進む可能性が開かれている。前進(ブレイクスルー)への道へと進むために必要なことは、制度や技術革新であるが、それを起こすのは、社会のある一定量を超えた人たちが新しい考え方――新しい価値観、認識、そして物事の優先順位――に至れるかどうか、である。
ということです。これが「ワールドシフト」の根底にある考え方だということが、お分かりいただけたかと思います。
ジェームズ・ラブロックなど多くの環境専門家が、もはや私たちには(a)ブレイクダウンへの道しか残っていない、と語るなか、ラズロは「いや、私たちには(b)ブレイクスルーへの道に進むための一縷の希望、チャンスが残されており、そこに進むかどうかは私たち人類の自由意志による選択に委ねられている、とします。
ラズロは、カオスの特性から、私たちに残された最後の希望を見出しているのです。
「消費者や顧客として、納税者や有権者として、また、世論の担い手として、わたしたちは来るべきカオス・ポイントを、平和と持続可能性の方向への転換点とするような揺らぎ――行動やイニシアチブ――を作り出すことができる。自分たちが握っているこの力に気づき、それを活用する意志と知恵をもてば、人間は自分たちの運命を自ら決定することができるのである。」(P32)
残すところあと2年、日本はこの半年で完全に逆戻りしてしまった感がありますが、これもカオス・ポイントに至るための大きな揺らぎの中の揺り戻しに過ぎない、ともいえ、近い将来、昨年秋以上に大きな前進があることを期待したいと思います。
「人間も、他の複雑な生命体と同じく、たえず『カオスの縁』[秩序とカオスの境界に位置する、きわめて柔軟な状態]に存在する、極度に敏感な系である。それは、生命系が集合して形成する生態系や社会の場合も同じである。これらの集合的な系は、その構成要素となっている個々の系よりもはるかに広大で、持続性も高いが、システム進化の力学は、これらの集合系にもあてはまる。
個々の、あるいは、集合的な生命系の進化は、系にかかっている主な制約に対して、その系がどのような振舞いをするかを表わす微分方程式によって記述されるのが普通である。だが、人間が形成する社会については、このような手法は使えない。精神や意識の存在が、進化の力学を複雑にするからである。社会に属する個々の人間の意識は、系である社会の動向に影響を及ぼし、人間が関与しない系よりも、はるかに複雑にしてしまうからだ。
比較的安定した時代には、個人の意識が社会の動向を左右する決定的役割を果たすことはない。これは、安定した社会システムは『ずれ』を弱め、孤立させてしまうからである。しかし社会が安定性の限界に達し、カオスに陥ると、きわめて敏感な状態になり、社会の成員の価値観、信念、世界観、願望に生じた変化などの、ごく小さな揺らぎにさえも反応するようになる。」(P31・32)
しばらく続いた安定期から転換点に入った社会は、恒常性(ホメオスタシス)が失われ、不安定な動きをし始めるようになります。
社会の動きは、数式による定量的表現で表されるのは計量経済学などごく僅かですが、それさえも転換点に入ると有効性が低下し、有効な経済政策が打ち出せなくなります。
私は54歳になりましたが、今から20年前、1990年くらいまではまだ社会はずっと安定していて、この先も毎年毎年同じように経過していくんじゃないか、という何とはなしのイメージをもっていました。
それが、この20年で本当に社会は激変し、安定性を失って、次に何が起きてくるのか読めない感じを強めています。
そんな時代でも、社会変動を的確に予測して名声を高めてきた専門家もいるのですから、そこには何からの法則性がないわけではありません。
ラズロはカオス理論を転換点に入った社会に適用した場合、次の4つの段階を経て展開していく、としています。それは、
1.起動(トリガー)段階、
2.蓄積段階、
3.決断期、
4.カオス・ポイント
と名づけられています。それぞれの段階の特徴は以下のとおりです(P34~40)。
1.起動段階:ハードテクノロジーの分野での革新が、人々の生活様式、労働形態に根本的な変化を引き起こし、各種資源の効率的な利用が進められる。
2.蓄積段階:ハードテクノロジーの革新が積み重ねられ、それに伴って人口増加に拍車がかかり、社会がいっそう複雑になって、社会や自然に対する人間の影響力が高まり、もはや元に戻すことのできない不可逆な変化を遂げる。
3.決断期:様々な行き詰まりにより、従来の価値観、世界観、倫理、願望が疑問視されるようになったことで、主流の社会秩序はストレスを受けて、社会は動揺期に入る。
4.カオス・ポイント:もはや後戻りのできなくなる重大な岐路。「崩壊(ブレイクダウン)への道」か「前進(ブレイクスルー)への道」のどちらかに進まざるを得なくなる。
現在がこの転換点に入っていることは疑いありませんが、人類は過去何回か同様の転換点を経験し、(神智学的にいえばアトランティス人種の次のアーリア人種に入って以降は)それを見事にブレイクスルーの方に乗り越えてきた、と考えられます。
各転換点の都度、同様の4段階のプロセスがあったのだと思いますが、現在の転換点は具体的にはどのようなものだったのかというと、
1.起動段階=1800~1960年:新石器時代以降、工業化時代の到来までの8000年間には、それほど目立った技術革新はなかったが、1800年頃から繊維産業で木綿の紡績で技術革新がもらたされたのを皮切りにイギリスで産業革命が起こり、様々な分野に波及した。19世紀末にはエジソンによる電気をはじめとする一連の発明により、この動きはさらに加速する。
2.蓄積段階=1960年~現代:1960年代に入ると、今日のIT産業につながる情報分野での技術革新が一気に進み、「第2の産業革命」ともいえる状況を呈した。それにより、生産と消費は合理化されコストも激減して、開発・生産・使用・廃棄が激増した。経済のグローバル化が進むとともに、地域の伝統が破壊され、貧困・格差問題が拡大し、生活環境は著しく悪化した。
3.決断期=2005~2012年:2.の状況が加速し、テロや戦争、政治的対立、経済・金融の不安定化、気象・環境の悪化によって、世界システムの持続不可能性が明らかになってきた。
4.カオス・ポイント=2012年:この年に特定されているのは、様々なデータに基づく計算と、マヤ文明の予言などからの推論による。このカオス・ポイントに向かって、今の時点では私たちの前には2つの道
(a)崩壊(ブレイクダウン)への道:最悪の状態へと向かう退化
(b)前進(ブレイクスルー)への道:新しい文明へと向かう進化
に進む可能性が開かれている。前進(ブレイクスルー)への道へと進むために必要なことは、制度や技術革新であるが、それを起こすのは、社会のある一定量を超えた人たちが新しい考え方――新しい価値観、認識、そして物事の優先順位――に至れるかどうか、である。
ということです。これが「ワールドシフト」の根底にある考え方だということが、お分かりいただけたかと思います。
ジェームズ・ラブロックなど多くの環境専門家が、もはや私たちには(a)ブレイクダウンへの道しか残っていない、と語るなか、ラズロは「いや、私たちには(b)ブレイクスルーへの道に進むための一縷の希望、チャンスが残されており、そこに進むかどうかは私たち人類の自由意志による選択に委ねられている、とします。
ラズロは、カオスの特性から、私たちに残された最後の希望を見出しているのです。
「消費者や顧客として、納税者や有権者として、また、世論の担い手として、わたしたちは来るべきカオス・ポイントを、平和と持続可能性の方向への転換点とするような揺らぎ――行動やイニシアチブ――を作り出すことができる。自分たちが握っているこの力に気づき、それを活用する意志と知恵をもてば、人間は自分たちの運命を自ら決定することができるのである。」(P32)
残すところあと2年、日本はこの半年で完全に逆戻りしてしまった感がありますが、これもカオス・ポイントに至るための大きな揺らぎの中の揺り戻しに過ぎない、ともいえ、近い将来、昨年秋以上に大きな前進があることを期待したいと思います。
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